2013年01月の記事一覧

堀木エリ子さんの工房。

2013.01.10 UP

先日、京都に出掛けてきました。
ずっとこの日を
楽しみにしていたんです。

目的地は、和紙デザイナー、
堀木エリ子さんの工房。
以前にもご紹介させて頂きましたが、
ミッドランドスクエアでは今年3月、
6th Anniversaryにて
堀木エリ子さんとコラボレーションいたします。
なんと、ミッドランドのために、
オリジナル作品を作って下さるんです。
その制作風景を拝見するために
京都までやってまいりました。

初めに、太秦天神川にある
堀木さんのショールームへ。


「わぁ・・・。」
中に入った瞬間、
思わず声を上げました。
目の前に素晴らしい作品の数々。

広報の細尾さんが
1枚ずつご説明して下さいました。

まず、その大きさに驚きます。
伝統を根底におきながらも
革新的な新しい技法を見出し、
最大16×6mもの巨大な和紙を
1枚で漉きあげる手法を開発されました。
福井の工房では2.7×2.1mの和紙を
職人5人と堀木さんのスタッフ5人、
計10人がかりで制作されるそうです。

この作品は、
「たたみいわしのような和紙」
というオーダーに答えたものだそうです。
後ろから光を当てた時、
木漏れ日のような美しい影が
出来上がります。

こちら、ご覧下さい。
前面から光を当てた時と、
背面から光を当てた時で
こんなにも絵柄が変わるんです。
前面からと・・・

背面から。

ユニークですよねぇ。
何故こんなにも表情が変わるのか?
それは、和紙が
何層にも重なっているからです。
様々な異素材や、染料、銀箔等を
漉き込みながら幾層にも重ね、
1枚の和紙が出来ています。
それらの素材や重なりが陰影となって
表現されるんですね。

もう少し、この変化をご紹介しましょう。
前面から。
真っ白な地模様のあるキャンバス。

背面から。
色鮮やかな、迫力の「滝」が現れます。

前面から。
銀箔が輝く和紙。

背面から。
不思議な形が現れます。

東から西へ移動する太陽とともに、
朝と、夕方、違った顔を見せてくれる、
憎い演出ですよね。

またこちらは
自然が生み出す水の流れや
繊維の状態を見ながら
デザインされた作品。
長年の経験とセンスが問われる作業です。

これは成田国際空港で、
世界各国の方々を
お迎えしている作品とのこと。

ショールームのモニターで現場の
写真を見せて頂きました。
日本の玄関口で、
和の伝統文化を感じて
頂いているのでしょう。

今では家庭用として、
和紙のブラインドも
制作されているそうです。


こんなスクリーンがあったら、
絶対「モダンリビング」さんが
取材が来ますね。(笑)

堀木さんは、
この巨大和紙だけでなく、
立体的に漉きあげる手法も
開発されました。
針金や竹ひごなどの骨組みがなく、
糊もしない特殊な手法。
立体的に漉くことによって
微妙な曲線まで自由に
表現することができるそうです。


固定概念を超え、
技術革新を進める堀木さん。
それは伝統文化を
次世代へと繋げる上で、
制作者に課せられた使命でもあると
感じていらっしゃるようでした。

そして、工房へ。

竹林や田畑に囲まれた場所に
その工房はありました。
寒い、寒い、京都にて
屋根だけの半屋外。
(※制作中の作品は、お楽しみということで
画像処理で少々目隠しさせて頂いてます。)

凍てつくような寒さの中で
若い女性スタッフの方々が
冷たい水を使って、黙々と
作業をされていらっしゃいました。
「“冷たい”なんて通り越して
“痛い”です。
これを朝から夜まで
やってますからね。
手の感覚なんてないですよ。」

どれも初めて見る材料、道具、手法。
興味津々で質問攻めしてしまいました。
そして、ここにも堀木さんの
革新的なアイデアが。

「道具もね、
今、どこでも手に入るような物を代用して
現代版に作り変えたの。
和紙という伝統文化を残そうと思っても
道具や職人さんがいなくなってしまったら
それが途切れてしまうでしょ。」
なるほど・・・ごもっともです。
そんなところにも“堀木イズム”が
生かされていたんですね。

そして、貴重な作業風景を
撮影させて頂きました。
束子で力いっぱい水滴を叩き付け、
和紙に表情を作っていきます。
体力と根気を要する
大変な大変な作業です・・・。

時折、堀木先生の厳しい指導の声が
工房に響きます。
「はいっ!」と、全員揃っての大きな返事。
寒さと緊張感で、
工房内の空気は張り詰めています。
厳しい“指導”の下、
ミッドランドの作品を制作して下さっている
皆さんの姿に胸を打たれました。

数ヶ月に渡る制作。
どんな風に完成し、
光が灯されるのか、
とてもとても楽しみです。

堀木先生、
貴重な現場を見学させて頂き、
本当に有難うございました。
3月、宜しくお願い致します!

●堀木エリ子 オフィシャルサイト
http://www.eriko-horiki.com/